私がほっこり紹介する「10倍株の銘柄候補」の第一弾は、トヨクモ(4058)です。トヨクモは、2022年8月10日の引け後に2022年度第2四半期(上期)の決算発表がありました。
本記事では、トヨクモの概要の紹介と決算資料のポイント、銘柄分析について、解説していきます。なお、各所に用いた数値は2022年8月時点のものです。
ここがポイント
- クラウドサービスである安否確認サービスとサイボウズ社が提供するキントーンとの連携サービスが事業の柱
- 2022年は増収率は約30%、増益率も26%と高成長が継続しているものの、成長が少し鈍化し始めている
- 2021年度から新規サービスとして、スケジューラーを開始
- 2022年度上期決算によると、会社予想に対して売上の進捗率は48.0%、経常利益の進捗率は76.2%と順調
- 2022年度下期は、広告宣伝費の支出を増やす予定のために2022年度上期と比べて減益の見込み
トヨクモとは
トヨクモがどのような会社かを簡単に解説しておきましょう。
会社概要
事業は法人向けのクラウドサービスのみで、安否確認システムとサイボウズが提供するキントーンと連携したサービスの二つが柱。特に安否確認サービスは、レビューサイトである「ITreview カテゴリーレポート」の安否確認カテゴリで、セコムなどを抑えて、トップ評価を獲得。
- 設立年:2010年8月
- 上場年:2020年9月
- 業種分類:情報通信
- 決算:12月末日
- 上場証券取引所:東京証券取引所 グロース市場
- ホームページ:https://toyokumo.co.jp/
業績の推移
次にトヨクモの業績の推移を以下に示します。ここ3年の売上は、毎年40%以上の伸びを見せており、3年間で3倍以上となりました。会社発表によると、2022年度も約30%、増収する計画です。営業利益率も2021年度は28.6%(新基準)と高い水準で、本年度も28.0%と同程度を予定しています。
※2022年12月より、「収益認識に関する会計基準」の適用することから、 売上高の計上方法が変更されました。2021年12月期は、旧基準と新基準の業績を示しています。
2022年度第2四半期決算資料を読み解く
それでは、2022年8月10日に発表されたトヨクモの2022年度上期決算について、読み解いていきましょう。
会社予想に対する進捗率
2022年度上期決算は、会社予想に対して売上の進捗率は48.0%、経常利益の進捗率は76.2%と順調でした。
※トヨクモ「2022年第2四半期 決算説明資料」より抜粋(P.21)
しかし、広告宣伝費に関しては、上期で40%消化する予定だったが、25%しか支出していません。これは、冬季オリンピックの影響や3Qに集中して予算を投下する方針に切り替えたためと会社の説明があることから、3Q以降の支出は増える見込みです。経常利益率の進捗が上期は76.2%と高いために上方修正を期待したくなりますが、現段階では会社予想どおりに着地する可能性が高くなったといえます。
直近四半期における増収率
決算資料を見て、気になった点は増収率の伸びが鈍化しているのではないかという点です。それは第2四半期の売り上げの伸びが小さくなっている点から読み取りました。以下に新しい会計基準をもとに直前四半期比での売上成長率を記載しています。
※トヨクモ「2021年12月期 決算説明資料」「2022年第1四半期 決算説明資料」及び「2022年第2四半期 決算説明資料」をもとに作成
※2020年第3四半期は、トヨクモから新基準で売上を開示した資料なし
直前四半期に対して、少しずつ伸びが鈍化していることがわかります。加えて、第2四半期の売上の伸びがここ2年と比べて低く、さらに直前の第1四半期よりも小さい点が気になりました。というのも、トヨクモの事業は、法人向けのクラウドを利用したストック型ビジネスなのですが、日本の多くの企業は4月はじまりの企業が多いことから、第2四半期は新規契約を獲得しやすいはずです。しかし、2022年は売上の伸びが抑えられていることから、新規獲得のペースが落ちてきているといえそうです。
顧客数の状況
新規顧客数ですが、以下のとおり、以下でキントーン連携サービスと安否確認サービスの売上額を四半期ごとに示した表を載せました。安否確認サービスの顧客数の伸びの鈍化している点が気になりますが、決算資料のコメントによると、案件が大型化(1案件当たりのライセンス数が増加)しているとのことです。
※トヨクモ「2022年12月期第2四半期 決算説明資料」より抜粋(P.21)
安否確認サービスの案件の大型化は、四半期売上の推移で読み取れます。以下でキントーン連携サービスと安否確認サービスの売上額を四半期ごとに示したグラフを載せていますが、2021年第2四半期で安否確認サービスの売上は全体の約40%で、2022年第2四半期も変わらず40%のままなので、顧客数の伸びの鈍化している状況でもしっかり売り上げを伸ばしていることが見て取れます。
※トヨクモ「2022年12月期第2四半期 決算説明資料」より抜粋(P.21)
なお、資料内に記載がないので、気になったのは新規カテゴリーとして2021年に設定したスケジューラーの状況です。資料内では、キントーン連携サービスとして記載していますが、実際はどのくらい契約数があったのかなどを開示してほしいところです。加えて、新規サービスに関する情報が全くない点も今後のことを思えば、心配になりました。
あと、全体を通して解約率は1%未満と低い水準で落ち着いている点は評価できます。
下期業績の見込み
以下に下期業績を試算してみた結果を載せています。仮に会社が予想した試算通りに着地するとした場合、売上は伸びますが、販売管理費の増加に伴い、経常利益は上期の1/3まで下がる見込みです。営業利益率も上期44.4%に対して、12.9%と低下します。なお、広告宣伝費を第3四半期に集中投下するとのことですが、一気に投下することができずに下期の計画通りに落ち着く可能性もあると私は見ておりますが、そのケースであれば、下期の経常利益は上期の約半分の見込みです。
※トヨクモ「2022年12月期第2四半期 決算説明資料」をもとに作成
※Cは通期予想(A)から上期実績(B)を差し引いて、作成
※Dは広告宣伝費は当初の予想の60%しか消化せず、他は計画通りとして計算
銘柄分析
最後に銘柄分析を行いましたので、紹介します。
ファンダメンタルズ分析
トヨクモのファンダメンタルは以下のとおりです。10倍株の探索条件として、重要視している①増収率(20%以上)及び②営業利益率(10%以上)、③時価総額(200億円未満)、④上場から5年以内の条件は、すべて満足しています。強いて言うのであれば、PERが約38倍と少し高めなところが、気になりますが、以下で行った他社比較からすると、2022年度の会社予想で赤字の企業もいくつかあることから、目立って割高とはいえないです。
- 時価総額:150億円
- 最低購入価格:148,400円
- PER:37.66倍
- PBR:10.34倍
- 配当:(2021)5円、(2022(予))7~8円
- 予想配当利回り:0.48%
- 自己資本率:69.0%
- 増収率:(2021)43.9%、(2022(予))29.4%
- 増益率:(2021)79.9%、(2022(予))25.9%
- 営業利益率:(2021)28.6%、(2022(予))28.0%
※2022年8月10日終値で算出しております。
同業他社(四季報で分類されている業種:SI・ソフトウェア開発)との比較結果を以下にまとめました。比較してみて自身でも意外だったのですが、2021年度は減益の企業が目立っています。
※2022年8月10日時点の終値にて、比較。SBI証券のサイトを利用
株価チャート
以下に週足の株価チャートを示します。上場開始から一貫して、下落しており、2022年に入ってから公募価格である2000円を常に下回る状態です。ここ3か月は1250円~1600円の間をレンジを推移しています。今回の決算結果をどのように市場が評価するのかが今後のトレンドの鍵になりそうです。
株主構成
株主構成は、以下のとおりです。このうち、筆頭株主の株式会社ナノバンクは、創業者かつ現社長である山本裕次氏の個人資産管理会社であることから、トヨクモの株は半分以上が創業者が現在も保有している状況です。
- (株)ナノバンク 489(48.1)
- サイボウズ 80 (7.8)
- 山本裕次 60 (5.9)
- 田里友彦 60 (5.9)
- 落合雄一 54 (5.3)
10倍株探索条件の可否まとめ
トヨクモは調べた結果、私が示す10倍株の探索条件をすべて満足しています。
- 増収率(20%以上):〇
- 営業利益率(10%以上):〇
- 時価総額(200億円未満):〇
- 上場から5年以内:〇
- オーナー経営者かつ上位株主:〇
まとめ
ここまで、トヨクモの銘柄分析を行ってきました。私個人としては、現段階ではグロース株として有力な銘柄と判断しています。
しかし、株価が跳ね上がるかどうかは、現在の事業の柱となっている安否確認サービスとキントーン連携サービスだけではパワー不足であり、これらの事業の成長が鈍化する前に次の事業を立ち上げられるかどうか次第ではないでしょうか。そのため、昨年度にサービスを開始した「スケジューラー」などのトヨクモの新規事業の取り組みに注目していきます。
【注意事項】
最後に注意事項です。
どのような投資するかについては、あくまでご自身の責任に基いた判断のうえ、実施してください。
上記で記載した内容は、収集した情報や分析データに基づき、筆者個人の見解をまとめたものです。したがって、すべてが正確な情報であるとは保証できません。また、収集した情報やデータに関しても、投稿時点のものなので、すでに古い情報になっている可能性がありますので、ご注意願います。
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