私がほっこり紹介する「10倍株の銘柄候補」の第四弾は、アクリート(4395)です。アクリートは、2022年8月12日の引け後に2022年度第2四半期の決算発表がありました。また、同時に上方修正の発表がされています。
本記事では、アクリートの概要の紹介と決算資料のポイント、銘柄分析について、解説していきます。なお、各所に用いた数値は2022年8月時点のものです。
ここがポイント
- 第2四半期で上方修正を発表し、連結業績予想を売上高5,547百万円から5,726百万円に、営業利益を640百万円から923百万円に引き上げ。営業利益に関しては、前期より89.2%の増益。
- 事業は、企業から個人に対するSMS(ショートメッセージサービス)配信代行サービスのみ。SMS配信サービスは、本人確認の認証サービスや企業からの情報伝達する際の大量送信に利用されている。
- 2021年から2022年にかけて、3社を買収。その結果、売上高が2021年度から約2倍に伸長。
- 2022年度上期決算は、上方修正された数字を用いると、進捗率は売上高47.7%、経常利益率63.5%となり、順調に推移。
- 今後もSMSの配信数が年間40%ずつ増えるとの予測から、アクリーの発表資料によると、2025年度の売上高が連結150億円を見込んでおり、現在の約2.5倍まで成長する計画
アクリートとは
最初にアクリートがどのような会社かを簡単に解説します。
会社概要
事業は、企業から個人に対するSMS(ショートメッセージサービス)配信代行サービスのみで、「SMS送信サービス市場ー本人認証」において、ベンダー別売上金額がトップ(出典:ITR「ITR Market View ECサイト構築/CMS/SMS送信サービス/CLM/電子契約サービス市場2021」)
- 設立年:2014年5月
- 上場年:2018年7月
- 業種分類:情報通信
- 決算:12月末日
- 上場証券取引所:東京証券取引所 グロース市場
- ホームページ:https://www.accrete-inc.com/
業績の推移
次にアクリートの業績推移を以下に示します。2021年から2022年にかけて、SMS配信サービス企業3社を買収した結果、2022年度は売上高が前年度の約2倍に急拡大しました。加えて、コロナ第6波以降、感染した自宅待機者に対して保健所がSMSを利用して連絡を取るようになった結果、一時的な売上増加が発生し、営業利益も押し上げています。
3社を買収
2021年から2022年にかけて、3社を買収しました。このうち、VietGuys J.S.C.はベトナムの企業であり、日本国内でアクリートが展開しているサービスを海外展開するための第一歩とする計画です。また、買収により子会社を持つことになったことから2021年12月期第3四半期から連結決算に移行しています。
※アクリート「2022年第2四半期 決算説明資料」より抜粋(P.7)
今後の事業計画
2022年3月にアクリートが発表している「事業計画及び成長可能性に関する事項 」内に今後の事業計画が一部、示されていました。この計画どおりに進むのであれば、2025年度でさらに売上高が約2.6倍になり、連結150億円まで伸びる見込みです。
※アクリート「事業計画及び成長可能性に関する事項(2022年3月)」より抜粋(P.18)
この見込みは、デロイト トーマツ ミック経済研究所株式会社が発行する 「ミック IT リポート」 2021年 9 月号レポートのデータから、国内市場の成長率が40%以上を見込んでいることから出ています。あくまで参考情報なのですが、アクリートが2018年に発表した「事業計画及び成長可能性に関する事項」でも同様のレポートで市場予測を出していました。この2018年に提示した市場予測では2022年度で2,688百万通としており、今回の提示した2022年度の市場予測の数値とほぼ一致していました。
※アクリート「事業計画及び成長可能性に関する事項(2022年3月)」より抜粋(P.21)
ただし、一点気になるのが世界市場との成長率の差異です。Mobile Squad社が行った世界市場予測によると、年3.4%ペースで拡大するとなっており、日本市場との成長率の差が目立ちます。単に日本がSMS配信サービスで遅れているのか、それとも日本市場予測の見込みが甘いのかが気になるところです。(世界は2019年度に1.63兆通に対して、日本は9.19億通と1773倍も大きいことから、前者の可能性が高い気がします。)
※アクリート「事業計画及び成長可能性に関する事項(2022年3月)」より抜粋(P.22)
2022年12月度第2四半期決算資料を読み解く
それでは、2022年8月12日に発表されたアクリートの2022年12月期第2四半期決算について、読み解いていきましょう。
上方修正の発表
今回の決算の目玉は、上方修正の発表でしょう。上方修正により、連結業績予想を売上高5,547百万円から5,726百万円に、営業利益を640百万円から923百万円に引き上げました。その結果、営業利益に関しては、前期より89.2%の増益となる見込みです。
※アクリート「2022年12月期通期連結 ・ 個別業績予想の修正に関するお知らせ」より抜粋
会社予想に対する進捗率
2022年度上期決算は、会社予想に対して連結での売上高の進捗率は49.3%、経常利益の進捗率は91.6%と順調でした。なお、以下の資料の業績予想は上方修正前の数字で提示されています。決算発表と同時に上方修正された数字を用いると、進捗率は売上高47.7%、経常利益率63.5%となります。
※アクリート「2022年第2四半期 決算説明資料」より抜粋(P.9)、連結決算
単体についても、以下のとおり、コロナによる一時的なかさ上げはありますが、売上高は前期比53.6%と高い成長率となっています。
※アクリート「2022年第2四半期 決算説明資料」より抜粋(P.12)、単体決算
さらなる上方修正はあり得るか
※ここで記載している内容は、決算発表資料から私の見解で記載してものであり、アクリートが発表した情報ではありません。また、計算結果についても、確定したものではありません。アクリートに投資するかどうかは必ず各自の判断で行ってください。
今回の上方修正ですが、個人的には思ったより保守的だなと感じましたので、ここでその修正内容に関して、検証していきたいと思います。なお、私が保守的だなと思った根拠は以下の二つです。
- コロナ関連の売上高増加分のうち、第7波が過少ではないか
- 下期の売上高の見込みが過少ではないか
1.コロナ関連の売上高増加分のうち、第7波が過少ではないか
業績修正結果から、売上分の増加は連結で179百円、単体で135百円とされています。このうち、単体の増加分(135百万円)は、コロナの一時的な売り上げ増加分が主体と思われます。
一方で、単体の四半期業績の推移のグラフからコロナ売上を算出してみました。算出の仕方はアナログのやり方ですが、物差しを使ってコロナ関連とそうでない部分の長さを測定することで行っています。まず、1Qはコロナ関連以外は895百万円で、コロナ関連は290百万円となり、2Qはコロナ関連以外は870百万円で、コロナ関連は114百万円と算出されました。つまり、コロナ関連だけで404百万円がかさ上げされたはずですが、修正により上乗せした分(135百万円)と比べ、少ないです。
(※コロナ関連の売上高の数値の読み取りは、以下のグラフが正確な数値から作成された場合のみ有効です。)
※アクリート「2022年第2四半期 決算説明資料」より抜粋(P.14)
このコロナ関連の一時的な売上高と修正金額に差異がある点は、2022年度の当初計画を作成したときから、すでにある程度のコロナ関連の売上をアクリートは見込んでいた。しかし、その予測を上回ったために、その分だけ上方修正で上乗せしたと想定することができます。(四半期で100~150百万円程度は、当初から織り込み済みだった。修正はそれを超えた分だけ上乗せした。)
しかし、たとえそうだとしても、第7波は自宅待機者が出し第6波よりも自宅療養者数が増えて第6波のピーク時の2倍となっています。
そのことから、第7波でもアクリートが想定している以上にSMS配信サービスが利用されている可能性があります。ですが、第3四半期の決算資料を作成した段階では、まだ感染者数の予測は難しいですし、いつまでそれが続くかも予想はできないことから、今回の修正額にその分は正確に盛り込まれてはいないのではないでしょうか。この私の考えが正しければ、少なめに見積もっても第3四半期は第1四半期なみのコロナ関連の売上高の増加することになりますので、さらに売上高に上乗せが発生する可能性があると考えます。
2.下期の売上高の見込みが過少ではないか
また、上記の単体の業績推移のグラフから読み取れるとおり、2020年も2021年も下期が上期よりも売上高が増加する傾向があります。(2021年度の下期は、上期から43.8%の増収、2022年の下期は、21.7%の増収。)
※2019年も同様の傾向あり。ただし、上昇幅は約6%と小さい。上期686百万円に対して、下期は727百万円。それより前はデータがないので、確認できず。
2022年も同様の傾向を継続すると考えた場合、コロナ関連以外の売上高だけで上期の1760百万円を上回り、今期の残り分の1880百万円程度(上期から約7%の増収とする)まで稼ぐ可能性は高いと思われます。これにコロナ関連の増加分が加算されることを考踏まえれば、上期は1880百万円以上の売上高となってもよいと感じます。
銘柄分析
最後に銘柄分析を行いましたので、紹介します。
ファンダメンタルズ分析
アクリートのファンダメンタルは以下のとおりです。
- 時価総額:120.6億円
- 最低購入価格:205,000円
- PER:(連結)32.72倍→21.20倍
- PBR:(連結)6.33倍→4.10倍
- 配当:(2021)10円、(2022(予))10円
- 予想配当利回り:0.49%
- 自己資本率:61.0%
- 増収率:(2021)63.7%、(2022(予))102.1%
- 増益率:(2021)33.6%、(2022(予))100.2%
- 営業利益率:(2021)16.3%、(2022(予))16.0%
※2022年8月12日終値で算出しております。
※PER、PBRは上方修正前後を記しています。
※増収率、増益率は上方修正後の数値をもとに計算
私が10倍株の探索条件としている以下の4つは満たしています。
- 増収率(20%以上)
- 営業利益率(10%以上)
- 時価総額(200億円未満)
- 上場から5年以内
次に同業他社(SMS配信サービス)との比較結果を以下にまとめました。アクリートは、第7波によるコロナ患者数の増加での一時的な売上増加を見込んで、ここ1か月、人気化していてPERも同業他社よりも高い32.72倍(2022年8月12日時点)となっていましたが、今回の上方修正によりPERは同業他社とほぼ同程度になりました。
※2022年8月12日時点の終値にて、比較。SBI証券のサイトを利用
※アクリートに関して、上方修正されたデータで試算されています。
株価チャート
以下にアクリートの週足の株価チャートを示します。2020年3月中旬のコロナショック時に571円を付けてから、しばらく上昇トレンドを続け、2021年9月中旬に2607円と上場以来の最高値を付けた後、下降トレンドに転換。トレンド転換後、3か月で急ピッチに下落し、約1/3までになりました。
その後、コロナが再度、流行し始めたとき(第6波)に自宅待機者に対して、SMSで健康状態の確認する保健所が増えました。加えて、コロナの患者数が予想よりも多くなり自宅待機者が増えたために業績が上振れが期待され、株価が再度、上昇トレンドに転換しています。今回、上方修正が出たことから、コロナによる上振れ具合が見極められたことから、材料出尽くしを理由に再度、トレンド転換が発生する可能性がありそうです。
株主構成
株主構成は、以下のとおりです。経営者での株保有は、現在の田中優成社長のみが確認できます。ただし、保有している株数はそこまで多くありません。
- BANA1号有限責任事業組合 165(28.2)
- 上田八木短資 26 (4.5)
- NSL・DTTクライアント・アカウント3 22 (3.8)
- インタラクティブブローカーズ 20 (3.5)
- 日本カストディ信託口 17 (3.0)
- 田中優成 11 (1.8)
10倍株探索条件の可否まとめ
アクリートは調べた結果、私が示す10倍株の探索条件をすべて満足しています。
- 増収率(20%以上):〇
- 営業利益率(10%以上):〇
- 時価総額(200億円未満):〇
- 上場から5年以内:〇
- オーナー経営者かつ上位株主:〇
まとめ
ここまで、アクリートの銘柄分析を行ってきました。私個人としては、現段階ではグロース株として有力な銘柄と判断しています。
アクリートは2019年から2021年で売上高が2倍、2022年はさらにその2倍となる計画となっており、急成長を遂げています。調査会社が示している市場予測で国内市場は年40%ずつ、配信数が拡大していく見込みから、アクリートが発表している事業計画も202年度の売上高が2025年度には約3.3倍になる強気の予想をしています。
今後は、SMSサービスが予測どおりに日本で拡大していくかと海外展開がどの程度、成功するかがアクリートの成長が継続するかの鍵となりそうです。
【注意事項】
最後に注意事項です。
どのような投資するかについては、あくまでご自身の責任に基いた判断のうえ、実施してください。
上記で記載した内容は、収集した情報や分析データに基づき、筆者個人の見解をまとめたものです。したがって、すべてが正確な情報であるとは保証できません。また、収集した情報やデータに関しても、投稿時点のものなので、すでに古い情報になっている可能性がありますので、ご注意願います。
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