私がほっこり紹介する「10倍株の銘柄候補」の第六弾は、ユナイトアンドグロウ(4486)です。ユナイトアンドグロウは、2022年8月12日の引け後に2022年度第2四半期の決算発表がありました。(少し公開が遅くなりました。)
本記事では、ユナイトアンドグロウの概要の紹介と決算資料のポイント、銘柄分析について、解説していきます。なお、各所に用いた数値は2022年8月時点のものです。
ここがポイント
- インソージング事業とセキュリティ事業の2つがあり、インソージング事業がメイン(売上高で9割強)。インソージング事業では、IT人材や知識を顧客企業に提供するシェアリングサービスを行っている。
- コロナの影響があった2020年度を除けば、毎年、15%前後売上高を増やしている。また、ここ5年間は増収増益。営業利益率も13%前後を維持。
- 2022年度の増益率は4.5%と低め。これは、今後の事業拡大を目指して人員確保のための費用を多く見込んでいるため。
- 第2四半期の稼働率はここ3年で最も高い状況。加えて、ユナイトアンドグロウの売上高のキーパラメーターである人員面から見ても、昨年度よりも新規採用人数が増えている。
- 売上高はIT人材の数と強い相関があることから、今後の成長のためにはIT人材をどれだけ獲得できるかが鍵。一方で、日本はIT人材不足の状況のため、人材確保できるかどうかが事業リスクとなっている。
ユナイトアンドグロウとは
最初にユナイトアンドグロウがどのような会社かを簡単に解説します。
会社概要
事業は、インソージング事業とセキュリティ事業の2つ。売上高はインソージング事業の寄与分が9割強。
インソージング事業では、IT人材や知識を顧客企業に提供するシェアリングサービスを行っている。顧客は、IT人材を専門として雇う余裕がない中堅・中小企業が主体。売り物はIT人材と知識であることから、採用活動や人材教育に力を入れている。
- 設立年:2005年2月
- 上場年:2019年12月
- 業種分類:情報通信
- 決算:12月末日
- 上場証券取引所:東京証券取引所 グロース市場
- ホームページ:https://www.ug-inc.net/
業績の推移
次にユナイトアンドグロウの業績の推移を以下に示します。業績は毎年着実に伸びており、コロナの影響により低迷した2020年を除けば、毎年15%前後の増収率を継続しています。その結果、グロース株にしては少し物足りない部分はありますが、2022年度の売上高は2017年度の2倍になる予想です(5年間で2倍に)。営業利益率は2018年度以降は13%前後と高い水準を維持しています。
なお、今期に関して、増益率が4.5%(※上の表では4.4%。会社予想と違い小数点以下を切り捨てしている影響で異なる)と低い点が気になりますが、これは決算資料によると、事業拡大の鍵であり、リスクでもある人員獲得費用を多く見込んでいるためです。
インソージング事業とは
ユナイトアンドグロウを知るうえで、最も理解が難しいのが同社の柱となっているインソージング事業だと思います。正直、私も以下で十分に説明できているかは自信がありませんが、私なりに説明をしてみました。
まず、インソージング事業で顧客企業に何を提供して対価を得ているかというと、IT人材や知識を顧客企業に共有する「シェアリングサービス」です。人員をシェアすると書くと、技術派遣に類似しているように感じますが、異なるものです。
まず、技術派遣は顧客から求められたことを「受注」して開発すること(以下の図でいうと、ITベンダーに該当)になりますが、ユナイトアンドグロウのシェアリングサービスでは、システム開発を「発注」する側になります。もう少し具体的に書くと、ユナイトアンドグロウの社員が顧客企業にコーポレートエンジニアとして入り込み、顧客企業の立場で顧客企業のIT面のサポートを行います。そのため、例えば、顧客企業のシステムがどのようなものがいいのかを要望を取りまとめ、最適なITベンダーへ発注する仕事をしています。
※ユナイトアンドグロウ「2022年第2四半期 決算説明資料」より抜粋(P.6)
また、シェアリングサービスという名前のとおり、技術派遣のように一人の人が1件の案件をこなすのではなく、IT人材を複数の顧客企業とシェアします。つまり、ユナイトアンドグロウの社員は、複数の会社を担当しています。
中堅・中小企業には、1年間ずっとIT系の仕事があるわけではないので、通年で技術派遣を受けるのも無駄が出ることになります。一方で自前でIT人材を育てることも難しいです。この課題をユナイトアンドグロウはうまくすくい上げて、解決する手段を提供しています。
なお、IT人材をシェアリングサービスするという事業形態からIT人材をどれだけ抱え込めるかがポイントになります。一方で、日本ではIT人材は不足気味でありことから、IT人材の確保はミッションとしては大変な印象があります。ここは大きな事業リスクと言えます。
2022年12月期第2四半期決算資料を読み解く
それでは、2022年8月12日に発表されたユナイトアンドグロウはの2022年12月期第2四半期決算について、読み解いていきましょう。
会社予想に対する進捗率
2022年度上期決算は、会社予想に対して売上高の進捗率は48.3%、経常利益の進捗率は59.3%であり、2021年度第2四半期とほぼ同等の進捗率(売上高進捗率47.2%、経常利益進捗率53.8%)だったことから、順調と言えます。
※ユナイトアンドグロウ「2022年第2四半期 決算説明資料」より抜粋(P.16)
第2四半期で売上高を伸ばしている
今回、決算資料で注目したのは、ここ3年の傾向と比べて、第2四半期で第1四半期よりも売上高を伸ばしているところです。以下のグラフが示すとおり、2020年度及び2021年度の第2四半期は第1四半期の売上高と同程度ですが、2022年度は売上高が増加しています。このことから、私は現状、うまく事業が運営できており、第3四半期以降も順調に進んでいけると感じとりました。
※ユナイトアンドグロウ「2022年第2四半期 決算説明資料」より抜粋(P.18)
ここに注目した理由としては、日本では3月決算の会社が主流ですので、4月~6月にあたる第2四半期が契約の切り替わりの時期になることからどうしても売上高が伸ばしにくいはずなのに、第1四半期よりも売上高を増やしているからです。
なお、契約の切り替わりが多いという私の推定は、以下の稼働率のグラフからその傾向が読み取れ、年度内で見れば、第2四半期が低めになる傾向が読み取れます。ただ、それでも2022年度の第2四半期の稼働率はここ3年で最も高い状態にあることから、ユナイトアンドグロウの決算資料に書いてあるとおり、新規顧客を待たせるほど、引き合いが多いことが読み取れます。
※ユナイトアンドグロウ「2022年第2四半期 決算説明資料」より抜粋(P.19)
銘柄分析
最後に銘柄分析を行いましたので、紹介します。
ファンダメンタルズ分析
ユナイトアンドグロウのファンダメンタルは以下のとおりです。
- 時価総額:48.2億円
- 最低購入価格:124,400円
- PER:20.66倍
- PBR:3.19倍
- 配当:(2021)12円、(2022(予))14~16円
- 予想配当利回り:1.13%
- 自己資本率:69.3%
- 増収率:(2021)19.8%、(2022(予))14.1%
- 増益率:(2021)35.7%、(2022(予))4.5%
- 営業利益率:(2021)13.9%、(2022(予))13.0%
※2022年8月15日終値で算出しております。
私が10倍株の探索条件としている以下の4つのうち、増収率以外の3つは満たしています。ただし、個人的には、グロース株で最も重要視すべきところは増収率だと考えていますので、この点が満足できていないことは、懸念点です。
- 増収率(20%以上)
- 営業利益率(10%以上)
- 時価総額(200億円未満)
- 上場から5年以内
ユナイトアンドグロウが行っている事業は、他社にはない独自なものなので、比較対象が難しいですが、四季報で競合として挙げられていた3社で他社比較した結果を以下にまとめました。あくまで参考までとしてください。
※2022年8月15日時点の終値にて、比較。SBI証券のサイトを利用
株価チャート
以下に上場以来の週足の株価チャート(2022年8月12日時点)を示します。2022年2月以降は公募価格である1270円近辺が上限となり越えられず、950円~1350円のレンジを推移しています。また、以下のグラフにはないですが、ここ最近は出来高も低調です。
株主構成
株主構成は、以下のとおりです。創業者の須田騎一朗社長が約15.7%の株を保有しています。この点は、私が10倍株の探索条件の一つに挙げている「オーナー経営者かつ上位株主」の条件に合致しています。
- エス・アセットマネジメント(株) 100(26.9)
- 須田騎一朗 58(15.7)
- 日本カストディ信託口 12 (3.3)
- 岡美恵子 9 (2.5)
- 自社従業員持株会 7 (2.0)
10倍株探索条件の可否まとめ
ユナイトアンドグロウは調べた結果、私が示す10倍株の探索条件のうち、増収率を除いた3条件を満足しています。
- 増収率(20%以上):×
- 営業利益率(10%以上):〇
- 時価総額(200億円未満):〇
- 上場から5年以内:〇
- オーナー経営者かつ上位株主:〇
【番外編】社長ブログ
銘柄分析とはあまり関係ありませんが、個人的にはユナイトアンドグロースの社長が書いているブログが会社のイメージが出ているなあと感じました(もちろん外向きに書いているとは思いますが)。私が一番好きなのは、「退職する際のお約束」のお話です。更新頻度はそこまで高くないし、会社の宣伝だけというのも多いですが、ユナイトアンドグロウに興味を持たれた方はちょこっと覗いてみたらいかがでしょうか。
まとめ
ここまで、ユナイトアンドグロウの銘柄分析を行ってきました。成長性の観点でいえば、人員がどれだけ獲得できるか次第となり、IT人材の確保がどのIT企業でも課題としている状況から急成長は難しい印象があります。
一方で、個人的には同社の事業形態は、独特であり他社がまねしづらい事業なので、着実に成長していくのではないかと判断しています。
【注意事項】
最後に注意事項です。
どのような投資するかについては、あくまでご自身の責任に基いた判断のうえ、実施してください。
上記で記載した内容は、収集した情報や分析データに基づき、筆者個人の見解をまとめたものです。したがって、すべてが正確な情報であるとは保証できません。また、収集した情報やデータに関しても、投稿時点のものなので、すでに古い情報になっている可能性がありますので、ご注意願います。
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