私がほっこり紹介する「10倍株の銘柄候補」は、ベネフィットジャパン(3934)です。ベネフィットジャパンは、直近でいうと2022年8月10日の引け後に2023年3月期第1四半期の決算発表がありました。ちなみに、決算発表後の株価の反応は、約11%下落(8/10終値1760円→8/26終値1570円)しています。
本記事では、ベネフィットジャパンの概要の紹介と決算資料のポイント、銘柄分析について、解説していきます。なお、各所に用いた数値は2022年8月時点のものです。
ここがポイント
- ベネフィットジャパンは、MVNO(仮想移動体通信事業者)事業者であり、サービスとしてはモバイルi-Fiが主力。
- 新規事業として立ち上げているコミュニケーションロボット事業は、2024年3月期に70億円(2021年3月期の約6倍)を目指しており、積極的に投資を実施。
- 着実に売上高を伸ばしており、ここ4年度の増収率は16~30%。営業利益率も12~15%前後と高い水準。
- 中期計画によると、2024年3月期は2021年3月期に対して、売上高は1.8倍、営業利益は1.56倍に伸ばす計画。
- 会社予想に対して売上高の進捗率は21.2%、経常利益の進捗率は11.5%。前期と比べても進捗に遅れが目立つ。
ベネフィットジャパンとは
最初にベネフィットジャパンがどのような会社かを簡単に解説します。
会社概要
ベネフィットジャパンは、NTTドコモなどの大手携帯キャリアから通信インフラを借りて、顧客に独自の通信サービスを提供するMVNO(仮想移動体通信事業者)であり、モバイルi-Fiが主力となっています。また、コミュニケーションロボット(SHARP のロボホンなど)を新規事業として立ち上げ中。
- 設立年:1996年6月
- 上場年:2016年3月
- 業種分類:情報通信業
- 決算:3月末日
- 上場証券取引所:東京証券取引所 プライム市場
- ホームページ:https://www.benefitjapan.co.jp/
業績の推移
次にベネフィットジャパンの業績の推移を以下に示します。毎年着実に売上高を16~30%の間で伸ばしており、2022年3月期の売上高は2018年3月期の約2倍となりました。営業利益率も12~15%前後と高い水準です。
中期経営計画
ベネフィットジャパンは2021年5月に「中期経営計画(2021~2023年度)」をプレスリリースしています。その資料によると、2024年3月期は2021年3月期に対して、売上高は1.8倍(2024年3月期:18,000百万円)、営業利益は1.56倍(2024年3月期:2,000百万円)に伸ばす計画です。ただし、経常利益率は2021年3月期(12.9%)からわずかに下がり、11.1%の予定です。
※ベネフィットジャパン「2021年5月_中期経営計画(2021~2023年度)」より抜粋(P.4)
ロボット事業の概略
ベネフィットジャパンは、シードプランニングが2018年に公表した国内のコミュニケーションロボットに関する調査から、コミュニケーションロボット事業の成長性に目を付けて積極的に開発を進めています。
※ベネフィットジャパン「2021年5月_中期経営計画(2021~2023年度)」より抜粋(P.13)
どのくらいベネフィットジャパンが本気なのかというと、ロボット事業は2021年3月期で12億円だったものを2024年3月期に約6倍の70億円にする計画にしています。
※ベネフィットジャパン「2021年5月_中期経営計画(2021~2023年度)」より抜粋(P.8)
この中期計画を成し遂げるために、ベネフィットジャパンは人材投資と代理店販売網の構築に積極的に投資する計画です。
※ベネフィットジャパン「2021年5月_中期経営計画(2021~2023年度)」より抜粋(P.17)
2023年3月期第1四半期決算資料を読み解く
それでは、2022年6月29日に発表されたベネフィットジャパンの2023年3月期第1四半期決算について、読み解いていきましょう。
会社予想に対する進捗率
2022年3月期第1四半期決算は、会社予想に対して売上高の進捗率は21.2%、経常利益の進捗率は11.5%でした。2021年3月期第1四半期の売上高の進捗率は23.4%、経常利益の進捗率は23.1%のため、進捗に遅れが目立ちます。遅れた理由としては、ロボット事業が起因しているそうで、売上高に関しては、新卒社員の生産性が想定より低かったこと及び優良売り場の確保ができなかったこと、営業利益に関しては販売人員増及び家電量販店との提携に伴う販売促進コスト等の増加要因により低水準にとどまったとのことです。
※ここはあくまで「個人的な」感想です。ベネフィットジャパンが資料内で述べている進捗率の遅れの理由は、公に書くべき内容でないと感じます。例えば、「優良売り場が確保できない」はいいわけになってません。競合が激しかったとか、賃料が高騰していて手が出せなかったとかといった、売り場を確保できなかった理由といったほかに大事な何かが原因があるはずです。また、新卒社員に関する記述は、目を疑いました。新入社員はおそらく4月入社だと思うのですが、たった3か月しか在籍していないにもかかわらず、このように「生産性が低い」と名指しされて売上高の低迷の理由に使うのは、たとえ事実だったとしてもさすがにどうなのでしょうか。。。
※ベネフィットジャパン「2023年3月期第1四半期 決算説明資料」より抜粋(P.8)
ロボット事業の現状
ベネフィットジャパンの成長のカギを握っているロボット事業の現状についてです。2023年3月期第1四半期決算資料にはロボット事業に関する説明がほとんどなかったので、2022年3月期通期決算資料から引用した以下のデータを示します。これを見る限り、順調に進んでいるように見えます。
※ベネフィットジャパン「2022年3月期 通期決算説明資料」より抜粋(P.23)
しかし、決算資料内でロボット事業の2023年3月期第1四半期で6.2億円しかなく、単純に4倍しても通期で約25億円にしかなりません。つまり、中期計画で予定していた2024年3月期で売上高70億円にするにはここから来年1年で約3倍にする必要がありますが、継続して順調に成長させていくことができなければ、中期計画の実現性は厳しいと感じます。そのため、決算時にはロボット事業の売り上げが直前の四半期に対して、伸びているかどうかを確認すべきです。
一方で、モバイルWiFi事業は好調のため、このままいけば今年中に中期計画の目標である110億円を達成できるかもしれません。
銘柄分析
最後に銘柄分析を行いましたので、紹介します。
ファンダメンタルズ分析
ベネフィットジャパンのファンダメンタルは以下のとおりです。
- 時価総額:92.8億円
- 最低購入価格:156,000円
- PER:8.23倍
- PBR:1.51倍
- 配当:(2022.3)9円、(2023.3(予))9円
- 予想配当利回り:0.58%
- 自己資本率:61.2%
- 増収率:(2022.3)16.3%、(2023.3(予))21.0%
- 増益率:(2022.3)17.1%、(2023.3(予))-2.1%
- 営業利益率:(2022.3)13.2%、(2023.3(予))10.7%
※2022年8月26日終値で算出しております。
私が10倍株の探索条件としている以下のうち、2023年3月期は上場から5年以内の条件を除いて満足しています。
- 増収率(20%以上)
- 営業利益率(10%以上)
- 時価総額(200億円未満)
- 上場から5年以内
ベネフィットジャパンと同じくMNVO事業あるいはモバイルWiFi事業をメインで行っている上場企業と比較してみました。PERに関しては、他の競合企業よりも低く、割安と言えます。また、営業利益率も他社と比べて良好です。
※2022年8月26日時点の終値にて、比較。SBI証券のサイトを利用
株価分析
以下にベネフィットジャパンの週足の株価チャート(2022年8月26日時点、2016年11月末~)を示します。公募価格は660円(2017年7月に1:3の株式分割を実施、それを考慮した価格)でしたが、上場以来ほとんどの期間で公募価格割れはしていません。2021年11月の上場来高値である3015円を付けてからに入ってから下降トレンドに入っており、現在、上場来高値の半値となっています。
株主構成
ベネフィットジャパンの株主構成は、以下のとおりです。創業者でもある現社長の佐久間寛氏が筆頭株主で、加えて第2位の株主である(有)サクマジャパンも佐久間氏の資産管理会社です。このことから、10倍株の探索条件の一つに挙げている「オーナー経営者かつ上位株主」の条件には合致しています。
- 佐久間寛 140(23.6)
- (有)サクマジャパン 122(20.5)
- (株)UH Partners 2 59 (9.9)
- (株)UH Partners 3 59 (9.9)
- 光通信(株) 50 (8.4)
10倍株探索条件の可否まとめ
ベネフィットジャパンは、調べた結果、以下で掲げている私の10倍株の探索条件のうち、「上場から5年以内」を除く4つの条件を満足しています。
- 増収率(20%以上):〇
- 営業利益率(10%以上):〇
- 時価総額(200億円未満):〇
- 上場から5年以内:×
- オーナー経営者かつ上位株主:〇
まとめ
ここまで、ベネフィットジャパンの銘柄分析を行ってきました。主力事業であるモバイルWi-Fiは好調で、2021~2023年度の中期計画でいえば、今年度は中間年度にもかかわらず、前倒しで達成できる可能性があります。
一方で、成長分野に位置づけているロボット事業については、中期計画の目標で70億円としていますが、進捗率が少し悪いように感じます。ただし、ここから急成長する可能性もありますので、ロボット事業に関しては、四半期ごとでの売上高の伸びを注視していくべきです。
【注意事項】
最後に注意事項です。
どのような投資するかについては、あくまでご自身の責任に基いた判断のうえ、実施してください。
上記で記載した内容は、収集した情報や分析データに基づき、筆者個人の見解をまとめたものです。したがって、すべてが正確な情報であるとは保証できません。また、収集した情報やデータに関しても、投稿時点のものなので、すでに古い情報になっている可能性がありますので、ご注意願います。
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