私がほっこり紹介する「10倍株の銘柄候補」は、識学(7049)です。識学は、2023年1月10日の引け後に2023年2月期第3四半期の決算を発表しました。ちなみに、決算発表後(1/10)の株価は572円でしたが、明日の株価はどうなるでしょうか。
本記事では、識学の概要の紹介と決算資料のポイント、銘柄分析について、解説していきます。なお、各所に用いた数値は2023年1月時点のものです。
ここがポイント
- 識学は、独自組織運営理論『識学』による経営層向けコンサルが主力事業。
-
業績は着実に伸びており、2018年2月期から2022年2月期の4年間で売上高は約5倍に拡大。営業利益は少しずつ悪化しており、第2四半期決算時に発表した下方修正によると、今期は赤字予想に転落する見込み。
- 2023年2月期第3四半期決算は、売上高の進捗率は71.8%、営業利益は赤字。前年同時期と比べると、進捗わろし。
- 第2四半期にはなかった講師の品質向上のための社内テスト厳格化の影響で、講師数が減少。これに伴い、新規顧客数の増加が鈍化し、業績に影響している模様。講師数は次の四半期には75人から90~95人に増える見込み。
識学とは
最初に識学がどのような会社なのかを簡単に解説します。
会社概要
識学は、独自組織運営理論『識学』による経営層向けコンサルが主力事業。現在、スポーツ分野も開拓中。クラウド事業も育成。
- 設立年:2015年3月
- 上場年:2019年2月
- 業種分類:サービス
- 決算:2月末日
- 上場証券取引所:東京証券取引所 グロース市場
- ホームページ:https://corp.shikigaku.jp/
業績の推移
次に識学のここ数年の業績推移を以下に示します。業績は着実に伸びており、2018年2月期から2022年2月期の4年間で売上高は約5倍に拡大しました。営業利益は少しずつ、悪化しており、今年は赤字に転落する見込みです。
事業概要
識学は、独自の知見を活かした組織コンサルティング事業が主力です。他にも企業経営の組織コンサルティングを他分野に活用したスポーツチームの運営やスタートアップ企業の資金需要に応えるの投資ファンド事業を持っています。
※識学「2022年5月 事業計画及び成長可能性に関する事項」より抜粋(P.10)
MSワラントを発行した実績あり
識学は2021年3月に投資ファンドの設立や人材採用費用などを目的として、MSワラントを発行した実績があります。発行が発表された当時は、投資ファンドの設立のために資金調達をMSワラントで行ったことでかなり注目されました。
識学投資ファンドの実績としては、株式会社アイドマ・ホールディングスや株式会社ジオコードが株式上場を果たしました。
2023年2月期第3四半期決算資料を読み解く
それでは、2023年1月10日に発表された識学の2023年2月期第3四半期決算について、読み解いていきましょう。
下方修正を発表済み
2023年2月期第2四半期の決算発表時にすでに当初計画を修正した下方修正を発表し、黒字予想から赤字予想となっています。下方修正した理由は、人材採用・マーケティングに関する成長投資を前倒しで投下したにも関わらず、収益につながらなかったためとのことです。
※識学「2023年2月期第2四半期決算説明資料」より抜粋(P.17)
会社予想に対する進捗率
2023年2月期第3四半期決算は、下方修正した会社予想に対して売上高の進捗率は71.8%、営業利益は赤字でした。前年度同時期の進捗率は、売上高が73.4%、経常利益が77.1%でしたので、進捗は良くありません。
なお、前年同時期と比べて、増収(売上高:+17.7%)となっていますが、人件費増加の負担が大きく赤字転落となりました。また、四半期ベースでは、前年同時期の売上高から11.0%の伸びにとどまり、前々四半期2023年2月期第1四半期)の増収率30.6%及び前四半期(2023年2月期第2四半期)の増収率13.2%と比べて、成長が鈍化しているようにも見えます。
※識学「2023年2月期第3四半期決算説明資料」より抜粋(P.6)
以下に四半期別の講師数の推移を示します。今まで順調に講師数が増加していましたが、今期は一転して減少に転じています。これは、講師品質を向上させるために社内テストの厳格化した影響が出ているとのことです。次の四半期までには、講師の育成に力を入れて講師の卵を育て上げることで、90~95人体制にすることを目指すとのことです。(※第2四半期の資料では、社内テストを厳格がする旨は記載がありません。さすがに不親切(あるいは確信犯)ではないでしょうか。)
※識学「2023年2月期第3四半期決算説明資料」より抜粋(P.8)
次に四半期別の顧客数の推移を示します。基本サービスの契約者数を見てもらうとわかりますが、2Qから契約者数の伸びが止まっており、停滞中です。また、マネージメントコンサルティングの累計契約数は増加しているものの、前四半期と同じく新規契約者数は減少しています。この辺りの伸びの鈍化が売上高の増収率の低下につながっています。講師数の減少が影響しているとのことです。
※識学「2023年2月期第3四半期決算説明資料」より抜粋(P.9)
最後に識学の四半期ごとの新規アポイント獲得数及び受注金額の推移を以下のとおりです。識学は、アポイント獲得数を投入した広告宣伝費の効果の判定に使用しています。第2四半期は前四半期よりも広告宣伝費を抑制した結果、アポイント獲得数は減少しています。一方で、新規アポイント獲得数の低下しているにもかかわらず、受注金額は前四半期よりも増加しており、新規アポイント獲得数に対する受注獲得数の割合が改善したことが読み取れます。
※識学「2023年2月期第3四半期決算説明資料」より抜粋(P.12)
銘柄分析
最後に銘柄分析を行いましたので、紹介します。
ファンダメンタルズ分析
識学のファンダメンタルは以下のとおりです。
- 時価総額:47.3億円
- PER:ー倍(※当期純利益赤字予想)
- PBR:2.17倍
- 配当:(2022.2)0円、(2023.2(予))0円
- 予想配当利回り:0%
- 自己資本率:53.2%
- 増収率:(2022.2)52.6%、(2023.2(予))20.3%
- 増益率:(2022.2)73.9%、(2023.2(予))赤字転落
- 営業利益率:(2022.2)9.4%、(2023.2(予))赤字
※2023年1月10日終値で算出しております。
識学と同様にコンサルを事業として行っている上場企業と比較してみました。ここで比較した競合の中では前年度の実績ではありますが、識学の売上の伸び(増益率)は50%を超えており、抜きんでています。一方で、今期は当期純利益が赤字に転落する見込みとなり、利益面では不安がある状態のため、株価が低迷しているのも仕方ないと言えます。
※2023年1月6日時点の終値にて、比較。SBI証券のサイトを利用
株価分析
以下に識学の2020年4月以降の株価チャート(週足)を示します。公募価格は600円(株式分割1:3を考慮)で、上場してからしばらくの間は1500円~2000円で推移していましたが、コロナの感染拡大が始まった2020年4月に公募価格割れして上場来最安値となる575円を付けました。その後、上昇トレンドに入り、2021年2月に上場来最高値となる2805円まで上がり、その後はだらだらと下落し、現在は公募価格を割り込んだ500-600円で推移してます。
株主構成
識学の株主構成は、以下のとおりです。創業者で現在の社長である安藤広大氏が筆頭株主です。このことから、私が10倍株の探索条件の一つとして挙げている「オーナー経営者かつ上位株主」の条件には合致しています。
- 安藤広大 234(28.3)
- (株)ARS 112(13.5)
- 福冨謙二 109(13.2)
- 日本カストディ信託口 23 (2.8)
- ノムラノミニーズ・オムニバスマージンキャッシュPB 21 (2.6)
10倍株探索条件の可否まとめ
識学は、調べた結果、以下で掲げている私の10倍株の探索条件のうち、営業利益率を除いた4つの条件を満足しています。
- 増収率(20%以上):○
- 営業利益率(10%以上):×
- 時価総額(200億円未満):○
- 上場から5年以内:○
- オーナー経営者かつ上位株主:○
まとめ
ここまで、識学の銘柄分析を行ってきました。人材採用・マーケティングに関する成長投資を前倒しで投下したにも関わらず、収益につながらないという理由で、第2四半期ですでに会社計画を下方修正しています。組織コンサルティングが売り物にしているにもかかわらず、この理由はちょっとお粗末な気もしますが、どれだけ迅速に対応できるかを注視したいと思います。
第3四半期の決算内容は、第2四半期までの苦境が継続し、進捗率の観点からすれば悪めです。これは今期は急に講師の品質向上を目指して社内テストの厳格化を行った結果、講師数が減少した影響が出ています。来期は育成した講師数が増えることで業績が上向きになることを予想していますが、いきなり成果が出るものなのでしょうか。
【注意事項】
最後に注意事項です。
どのような投資するかについては、あくまでご自身の責任に基いた判断のうえ、実施してください。
上記で記載した内容は、収集した情報や分析データに基づき、筆者個人の見解をまとめたものです。したがって、すべてが正確な情報であるとは保証できません。また、収集した情報やデータに関しても、投稿時点のものなので、すでに古い情報になっている可能性がありますので、ご注意願います。
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